ポーカーの元プロが監修する本格戦略記事シリーズ、今回のテーマは「6-max キャッシュゲーム プリフロップ戦略」です!
前回の記事では、ノーリミットテキサスホールデムのキャッシュゲーム(有効スタック100bb)における「プリフロップ戦略」の概念と、無料で利用できるプリフロップソリューションとしてGTOWizardを紹介しました。
おさらいとなりますが、「プリフロップ戦略」とは「プリフロップにおいて、各ポジション、それぞれのシチュエーションで、どのようなハンドでどういったアクションを選ぶか」を定義するものです。
例えば、前のプレイヤーがすべてフォールドした場合、どういったハンドでオープンレイズするか、あるいはオープンレイズに対して、どういったハンドで3betやコールするかを判断することも、プリフロップ戦略の一部と言えます。
この記事では、プリフロップ戦略のうちオープンレイズについて解説します。
目次
プリフロップ戦略のオープンレイズを解説
UTGのプリフロップ戦略
上記の表はプリフロップで最初にアクションするUTGの戦略を表しています。
まだ誰もハンドに参加していない状態のため、UTGはレイズ(オープンレイズ)かフォールドのどちらか※を選びます。表の各マスは、UTGがあるハンドを持っているときにそれぞれ、レイズする(赤)、フォールドする(青)、レイズとフォールドを一定頻度で混ぜる(青赤2色)という選択をすることを表しています。
こうした表のことをオープンレンジ表やスターティングハンド表と呼びます。
※実際にはコールすることも可能ですが、コールで参加(リンプ)はキャッシュゲームにおいては悪い戦略とされており、このプリフロップソリューションにおいても選択肢から取り除かれています。
オープンレンジ表の読み取り方
例えば、いちばん左上は「AA」で、このマスは赤くなっていることから、UTGがAAを持っている場合にはオープンレイズします。
いちばん左下のA2o(A2のオフスート=スーツが違う2枚)は青なので、フォールドします。
いちばん右下の22は赤と青が2:8程度の割合で混ざっています。このような場合、その割合にしたがって約20%の頻度でレイズ、約80%はフォールドするというのが最適な戦略であることを表しています。
なお、細かい頻度の数字はマスの上にマウスオーバーすることで確認できます。
スーテッドとオフスート
AAや22のようなポケットペア以外のハンドでは、末尾にsかoがついています。
sは「スーテッド」といい、2枚のカードのスーツが共通であることをいいます。oは「オフスート」で、2枚のカードのスーツがそれぞれ違うことをいいます。
13×13の表の右上側にスーテッド、左下側にオフスートのハンドが配置されています。
- s:スーテッド 2枚のカードのスーツが共通であること
- o:オフスート 2枚のカードのスーツがそれぞれ異なること
こうしたオープンレイズレンジは、プリフロップ戦略の入口にあたるものではじめに身につけるべきものです。まずは、GTOWizardのプリフロップソリューション通りのオープンレイズレンジをプレイできるように、暗記、練習するのがよいでしょう。
各ポジションのオープンレンジ表
ここからは、アーリーポジションから順に、各ポジションの「オープンレンジ表」を見ていきましょう。
UTGのオープンレンジ表
- UTG:17.6%の頻度でオープンレイズし、82.4%の頻度でフォールド
66以下の小さいポケットペアや、T9s、98s、87sといったいわゆるスーテッドコネクターはフォールドの頻度がかなり高くなっています。
これらのハンドは一見強そうに見えますが、アーリーポジションから参加する(オープンレイズする)ハンドとしてはさほど価値が高いわけではなく、毎回参加してしまうとオープンレイズレンジが広くなりすぎて、3betへの対処やポストフロップのプレイに苦労することになるので注意しましょう。
HJのオープンレンジ表
- HJ:21.8%の頻度でオープンレイズし、78.2%の頻度でフォールド
UTGの場合よりは多くのハンドで参加できますが、同様に小さいポケットペアやコネクター系のハンドで参加しすぎないよう注意が必要です。
COのオープンレンジ表
- CO:29%の頻度でオープンレイズし、71%の頻度でフォールド
BTNのオープンレンジ表
- BTN:42.1%の頻度でオープンレイズし、57.9%の頻度でフォールド。
BTNはポジション上、自分より有利なインポジションのプレイヤーから3betやコールされる心配がなく、ポストフロップをインポジションでプレイできることが保証されていることもあり、非常に広いレンジでオープンレイズすることができます。
J8oやT5sといった一見かなり弱いハンドもレイズハンドに織り交ぜましょう。
SBのオープンレンジ表
- SB:43%の頻度でオープンレイズし、57%の頻度でフォールド。
SBだけではレイズ額が3bbとなっていることに注意してください。(他のポジションでは2.5bb)
SBは残っているプレイヤーであるBBに対してアウトポジションであること、すでに0.5bbのスモールブラインドを支払っていることから、少し大きめの3bbといったレイズサイズを使うことが一般的です。
43%のオープンレイズ頻度はおおむねBTNと同様なので、あわせて覚えてしまうのもよいでしょう。
オープンレイズレンジの基本的な考え方
オープンレイズレンジの基本的な考え方は、アーリーポジションではタイトに、そして、レイトポジション(後ろの方のポジション)になればなるほど高頻度、広いレンジでオープンレイズすることになります。
これは後ろにいるプレイヤーが少ないほど、自分のハンドが相対的に強くなるからです。言い換えれば、後ろのプレイヤーが自分より強いハンドを持っている確率が下がるということです。
数字を使って考えてみましょう。数式が苦手な方はその部分だけ読み飛ばしても大丈夫です。
例えば、KToを持っていたとします。このハンドはおおむね上位15%程度に位置する強いハンドです。このハンドを仮にSBで持っていた場合、後ろにいるプレイヤーであるBBがこれより強いハンドを持っている確率は約15%です。つまり、後ろのプレイヤーのハンドより強い可能性がかなり高いので自信を持ってオープンレイズすることができるでしょう。
一方で、UTGの場合後ろには5人のプレイヤーがいます。その5人のうち一人でもより強いハンドを持っている確率は、100% – (100% – 15%)^5 = 56%となります。したがって、2回に1回以上は後ろのプレイヤーが自分より強いハンドを持っていることになり、SBの場合と比べると同じハンドでもかなり「弱く」なっているのです。
初心者こそ表を元に適切な戦略を身につけよう
初心者の方は、正しい戦略よりもアーリーポジションで広く、逆にレイトポジションでは狭くなってしまう傾向があります。はじめのうちは表を何度も見返して、適切なオープンレイズレンジを体得しましょう。
本記事ではプリフロップ戦略の初めの一歩であるオープンレイズレンジについて説明しました。
まだ誰もハンドに参加していない状態で、あるポジションからオープンレイズするかフォールドするかを表したチャートのことをオープンレイズレンジ表やスターディングハンド表といいます。まずは、これらの通りプレイできるようになるのがよいでしょう。